墨坪の説明と歴史


使い方
墨坪は曲尺と共に大工道具の重要な墨付け道具です。
坪車に巻かれた糸の先端に結んだカルコを材木に差し、糸を引き出します。この時、糸はいけの中の墨を浸した綿を通るため墨を含みます。
糸を必要な長さに引き出して張り、指で抓んで打てば真っ直ぐな線を引くことが出来ます。

歴史
最近は墨坪というとプラスチック製か自動巻きのタイプが多くなりましたが、本邦では長い間、欅の木で作られた木製の坪が使われて来ました。

そんな、木製の墨坪が全盛の頃のことです。
私は、墨坪の職人さんの所へ商品の催促方々遊びに行って、「こんな便利な道具をいったい誰が発明したんだろう。」と聞いたものです。
その時の答えは、ほとんどの職人さんが「聖徳太子が考えたんだそうだ。」と言っていました。

ところが、本当はそうではなく、紐を張って線を引くという考えのものは古代エジプト時代にあったようです。
当時は、縄を漬ける程度だったそうですが、それが中国に渡って改良されて、更に朝鮮を経て今の形に近くなって日本に到来したと言うのが本当らしいです。

日本最古の墨坪
日本にある最も古い墨坪は正倉院にあるそうですが、さらに、東大寺の南大門の梁の上に置かれた墨坪があります。
これを始めは、棟梁が置き忘れたと思われていましたが、後に、自分の建てた誇りにすべきこの建物に記念に置いて来たものと考えられており、この墨坪は、今でも当初の思い違いの「忘れ物の墨坪」と名づけられて有名だとのことです。(上図はその復製品です)

その後は、長い間、大工さんが自分の使うものは自分で作っていたといわれます。
それが、近代になって(極く最近のことのようです)、専門の墨坪職人によって作られるようになったものです。

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