スーパー方言「はらくち」

私が幼い頃、よく祖母がこう言っていました。
「もうはらくちだ。食えねぇよ」
そして最近、母もこう言っています。
はらくちだったら食べなくていいよ」

さて、この「はらくち」、一体どういう意味なのでしょう?

それは、私の地方(新潟県柏崎市)で「お腹がいっぱい」という意味の方言です。

でもその語源は一体どこから来ているのかなぁ?
腹が口に迫って来るほど満腹だ、という意味でしょうか?………
う〜ん。
なぜか突然気になって、Googleで調べてみました。
Googleならきっと見つかるだろう、って、ワクワクしながら検索してみました。
ところが実際は、その語源を教えてくれるサイトはひとつもなく、「はらくちはオラが町の方言だ」、という「方言解説サイト」だけが続々と顔を出しました。

そこで皆さん、驚きの「はらくち方言リンク集」をご覧ください。(引用した文章は、原文のまま)


栃木県代表

「栃木のことば」

はらくちぃ
腹がいっぱいだ。「はらくちくなった」(おなかがいっぱいになった)本来形容詞だと思いますが、次のように動詞や形容動詞のような活用をすることもあります。「はらくちた」(おなかがいっぱいになった)。「はらくちになった」(おなかがいっぱいになった)。


茨城県代表

「Study of Ibaraki Dialect・茨城弁」

はらくち
はらくちくて は〜だいだ。→おなかがいっぱいで、もうだめ。


千葉県代表

「THE 印旛・印旛の言葉」

はらくち
腹が屈  お腹がいっぱいだ


埼玉県代表

「羽生タウン・羽生の方言」

はらくちぃ
満腹である(これ以上食べられないの意)


長野県代表

「信越方言講座」

はらくち
お腹がいっぱい


新潟県代表

「柏崎市生涯学習・荒濱方言ノート」

はらくち
腹がいっぱい


どうやら「はらくち」は、北関東から信越に掛かる地域で、「方言としてのステイタス」を確立しているみたいです。

結局、「はらくち」の語源はよくわからなかったのですが、今まで越後弁だと信じていたこの方言が、意外にたくさんの地域で使われていたことに驚きました。
そしてそれが、どのような経緯で、太平洋側と日本海側に渡り使われるようになったのか、とても気になります。
この方言が群馬県か山梨県、または福島県で使われていたとしたら、点と線が結ばれるんですけど、私が調べた限りでは、それらの県では、「はらくち」という方言は使われていませんでした………。

そこで私は「はらくち」について、ふたつの疑問を提唱いたします。

どの地方のひとたちも、「はらくち」は自分のふるさとの方言だと信じ込んでいます。
そこまで信じきっているからこそ、ホームページで堂々と「方言解説」を展開しているわけですが、「はらくち」の、本当の発祥の地(ルーツ)はどこなのか?
そして、「はらくち」の語源をぜひ知りたい。

県境のない日本海側と太平洋側で、「はらくち」は一体どのようなカタチで伝わったのか?
はらくち」の流通経路を知りたい。



別に「はらくち」について、こんなにダラダラと書いてもなんの発展性もありませんが、なんとなく謎が多い「はらくち」。

上記に引用した千葉県印旛村の説明の中に、「腹が屁」というヘンテコな言葉がありますが、その言葉こそ、もしかしたら「はらくち」の謎を解くヒントになるかも知れません。

いずれにせよ、こんなに広範囲で、「我が町の方言」として使われている「はらくち」、私はこの言葉に、「スーパー方言」という称号を、勝手に授けたいと思います。
はらくち」、バンザ〜イ!!